沿ドニエストル共和国という名前を聞いたことがある人はあまりいないでしょう。
沿ドニエストル・モルドバ共和国(は、ドニエストル川とウクライナ国境との間の細長い土地にあり国際的にはモルドバの一部と広く認められている分離国家である。首都はティラスポリ。
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新しい国家が成立したにもかかわらず,既存国家によって国際法上承認を与えられていないため、「未承認国家」となっています。
世界一周旅行者や、東ヨーロッパを長期旅行している人で、もの好きな人は「沿ドニエストル共和国」に行く人が多いです。
実際、「未承認国家に行ってきた」となれば、話のネタにもなるし、本も出版されています。
しかし沿ドニエストル共和国に関するブログを調べたところ、沿ドニエストル共和国でサッカー観戦したという記事は全くといっていいほど見当たりませんでした。
唯一と言っていい情報は、○○さんが書かれた「東欧サッカークロニクル」という書籍だけです。
沿ドニエストル共和国にあるチームは「シェリフFC」と言われ、モルドバリーグに所属するチームです。
モルドバリーグでは常勝チームとして知られ、2021年には欧州チャンピオンズリーグに出場し、最多優勝回数を誇るレアルマドリードに勝利したことで話題にもなりました。
そんなシェリフFCの試合を、私は2018年に現地観戦したので、体験談とともに記事にしました。
興味のある方は参考にしてみてください。
沿ドニエストル共和国へ入国
そんな「シェリフFC」の試合を観戦するために、ウクライナのオデッサからバスでモルドバに入国し、そこからバスで入国しました。
モルドバの首都キシナウからは乗り合いバン(マルシュルートカ)にのり、沿ドニエストル共和国へと向かいます。料金は36.50MDL(約240円)
途中で入国審査があります。パスポートを渡し、滞在の目的を尋ねられました。沿ドニエストル共和国の滞在時間は24時間までになっています。
モルドバは沿ドニエストル共和国を国として認めていないため、出国審査はありませんが、沿ドニエストル共和国へ入る際は、上記の写真のように滞在ビザを取得する必要があります。
滞在ビザはパスポートを見せて、滞在の目的を述べればすぐに発行してくれました。
沿ドニエストル共和国に入国したバスはティラスポリ駅に到着します。この場所で帰りの乗り合いバンの時刻表を確認し、現地通貨である沿ドニエストルルーブルに両替をしました。
車の表記されている国旗もモルドバではなく沿ドニエストル共和国の国旗です。
首都ティラスポリの街並み
試合開始時刻まで時間があるので、それまではティラスポリ市内を散策しました。
駅からあるいてすぐの場所にロシア正教会らしき建物があります。
今や世界中の観光地にある「I ♡(街の名前)」のオブジェがここにもありました。ロシア語で表記されているのは初めて見ます。
市内中心部の広場には見慣れぬ国旗が並ぶなか、ロシア国旗が大きくたなびいていました。
沿ドニエストル共和国は、ルーマニア系移民に国を統治されるのを嫌ったロシア系住民たちが独立を主張している背景があります。
これは別の未承認国家の旗です。左からナゴルノカラバフ・南オセチア・アブハジアの国旗です。沿ドニエストル共和国を国として認めているのは、同じく未承認国家の国々だけです。
市内には市場もあり、多くの人で賑わっていました。疑問に思ったのが、彼らの生活です。
未承認国家のパスポートではどこの国にもいけないだろうし、彼らはずっとここで生きていくのでしょうか?言葉が通じないので想像することしかできません。
人生初の未承認国家でサッカー観戦
スタジアムまではキシニョウ駅からタクシーで移動しました。料金は50ドニエストルルーブル(約350円)でした。
沿ドニエストル共和国にあるシェリフスタジアムは、モルドバリーグに所属するFCシェリフ・ティラスポリの本拠地です。
スタジアムの外観。上に突き出ている支柱が特徴的で、まるで要塞のような雰囲気があります。
チケット売り場はスタジアムの入り口に配置してあるので、そこで当日券を購入しました。
チケット代は10ドニエストルルーブル(約200円)。チケットにはQRコードが張られていて、入場する際はこのQRコードをかざして入場します。未承認国家にしてはなかなかハイテクだなと思いました。
スタジアム正面から撮影。自分以外に人影はほとんどありません。
スタジアムの規模は決して大きくありませんが、陸上トラックもなく、スタンドは傾斜がついているので非常に見やすいです。
日本のJ2レベルのスタジアムでこのようなスタジアムを是非もっと多く作って欲しいものですね。
選手入場。試合開始直前になって観客が集まってきましたが、それでも空席が目立ちました。
ゴール裏ではわずかながら声を出して応援する熱心なサポーターも見かけました。
試合に関しては、帰りのバスの関係で、前半しか見ることができませんでした。
スタジアムの外にはタクシーらしき車は見当たらなかったので、クラブ職員らしき人にタクシーを呼んでもらうように頼んでなんとかティラスポリ駅に戻ることができました。
後で気づいたのですがが、タクシーでモルドバに戻ることもできるので、お金に余裕のある人は利用してみるといいでしょう。
モルドバへ戻る際は、パスポートチェックはなく、そのまま帰ることができました。
おわりに
沿ドニエストル共和国でサッカー観戦をする際、以下の書籍を参考にした。
著者は東ヨーロッパを中心に16の国と地域を巡ったルポルタージュになっていて、沿ドニエストル共和国での取材も行っています。
単なるサッカーだけでなく、それをとりまく政治、民族、紛争問題にも深く追求している書籍となっており、東ヨーロッパについて知らなかったことを多く学べることができます。
サッカーファンでかつ東欧に興味を持っている人は是非読んでもらいたい1冊ですね。
それでは、また。
(訪問日:2018/9/30)